珍しい客

T.Masaki T.Masaki

2023.04.28

桜を散らす春の嵐が訪れた4月の初め。

その日は雨も深々と降り続けていた。

この日もいつもの様に、搬入口にて業者と荷物のやり取りをしながら他愛の無い会話を交わしていた。


「そういえば、鴨が2羽ほど会社の前におりますよ。」

「鴨?それはまた珍しいですね。」


会社の近くに草の茂る空き地があるのだが、何と鴨がどこからかやってきているというのだ。

その場所は降り続ける雨が溜まり、ちょっとした湿地のように様変わりする事が度々ある。

扉から顔を出して、その場所を眺める。


いた


「番か何かでしょうかね。」

「どうでしょうね。」


鴨そのものは溜池を通る際など、水場の近くでは過去何度も見たことはある。

だが、このような所で見かけるとは何とも珍しい。

もう少し近づいて様子を見たかったが、雨も降り続いている上、仕事中でもあったのでこの話題はここでお終いとなった。


夕方、雨も上がり仕事も終え帰路に就く。

ふと、例の空き地に目をやる。



そこには、朝に見かけた鴨がまだ居たのであった。

あれからずっと、ここに留まり続けていたというのだ。

一体、何の目的があったのだろうかと思いながらも、家に向かって自転車を漕ぐのであった。


翌日、水溜まりも残る空き地に目をやると、2羽の姿形は何処にもなかった。

何処からやってきて、何処へ飛び立ったのだろうか。


それは、鴨のみぞ知る。

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総務部 業務課

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